「やめろため息!罰金とるぞお前ら!」

「リーダーだってよくしてますよ、ため息。だって凹みますよ~リーダー。休みたいです、私」

 私は包丁をドンと(でも丁寧に)まな板の上に置いた。

「僕も・・・休みたいです」

「俺だって休みたいよ!お前らと違って俺は書類仕事もあるんだぞ!」

 文句言うなー!ってリーダーが叫ぶ。私は肩をすくめて串刺しに戻った。休み、本当に欲しい。今でも十分足りているとは言いがたいお給料だけど、それでもあの部屋代と必要経費が払えるだけあれば、あとは休んで部屋で作品の続きを書いていたいのだ。

 もうすぐ終わることが出来る。もう頭の中ではクライマックスまで出来上がっている。それをあとは文章にするだけなのに、こうも忙しいとその体力がない。やる気はあれど、体力がないのだ。部屋でやっとパソコンをつけた時にはすでに眠気に襲われている。

 作業場では、肉が傷むといけないので基本的には暖房ナシ。そこで一日中立ちっ放しで、カチカチのるいべ状態の生肉を触っている。指先から凍えて動いているのにえらく寒いのだ。

 夏はクーラーをかけてくれるけど(それも肉のため)、冬は本当に厳しい作業場だった。皆もこもこの服装で、下半身はたっぷりの衣類とカイロを装備している。それでようやく人間状態を保っているのだ。

 私と田内さんが静かになったところで、あ、でもな、とリーダーが明るい声を出した。

「いいニュースがあるんだった!今年は忘年会しようぜ。本社からお金出してくれることになったんだよ。ここの皆で何かうまいもの食べに行こう」