頭の中を、平野の言葉や行動がぐるぐると回っている。

――――――――「『それならあの雨上がりの公園で』だっけ、あれ?ちょっと題名が長くないか?」

 うるせえよっ!

――――――――「もしかしてこれって藤の要求なのかな、って」

 うるせええええーっ!!

 私は腹立ち紛れにクッションを二つ重ねてその上に全体重をのせて膝つきをする。何なのだ何なのだ!何であの男はいきなり来て私を欲求不満のかたまりみたいに言うのよ!!

 自分の要求を一々文にして発表している人などいないだろう!いやいや、もしかしたらいるのかもしれないけれど、少なくとも私は違う。作品をそんな風に見られたことがむかついたし、何よりも恥かしかった。

 これが壁ドンってやつだろ?だってー!!何よ偉そうに!バーカバーカ!なーにが一読者として、だ!バーカバーカバーカっ!!

 高峰リーダーが寄越したえらく厳重に封をしてある明細書は引きちぎってやった。これを忘れたからこんなことになったのだ!それって私のせいなのだろうけれど、どうしてあんなことを言われなきゃならないの!

 『あの頃の藤と今の藤、どっちが本当?』

「うっきいいいいいい~っ!!」

 ついたまらずに私は枕に顔を押し付けて絶叫した。ガンガンと脈打って頭が痛い。あまりにも腹が立つとこうなるのだって、私は初めて知った。

 私は本当に、あの男が好きだったのだろうか。平野だって大学生になってから変わったんじゃないだろうか。本当に、本当に私が好きだった平野と同じ人物かっ!?それとも私が知らなかっただけで、元からあんなに遠慮のない無分別な男だったのか!?