だけど電話の向こうで高峰リーダーが、へえ、と言ったその声色にぎょっとした。

『ここには金庫なんてねーの、わかってるだろ。今日取りに来ないんだったら俺がちゃんと着服してやるぞ~。それか適当に放り出しておいて、誰かがパクるのを見ても止めないか』

 口は悪いが真面目が服を着て歩いているようなリーダーのこと、冗談とは判っていても、むかついた。なんて上司だ、全く!私は更にしかめっ面をして仕方なく言った。

「わかりました!取りに行きますよ。5時までには行きます。要件はそれだけですか?」

『判子わすれんじゃねーぞー』

 ガチャン。職場の電話を置く音が響いて、私は舌打ちをしながらスマホを操作する。くっそ~、やな目覚めだわ、全く。お疲れ様、もしくはおはようの一言くらいないのかいっていうの。

 折角顔がいいのに、リーダーは本当に残念な態度で――――――――あ。

 考えながら、手をポンと打った。

 そうだそうだ、リーダーをモデルにして新しい登場人物を作ろうって思ってたんだった!思い出したぞ、うんうん。

「よしよしよし」

 一人暮らしになってから独り言が増えた私は、そう言いながらいそいそとベッドを出る。

 そうと決まれば早くパソコンをあけたい。そして小説の中に新キャラとして登場させよう。あまり性格はよくないから苛めキャラにすべきかな~。それか逆転の発想で苛められキャラとか?

 11月とはいえまだ温かく、部屋には暖房の必要もない。私はぱぱっと服を着替えて洗顔を済ませると、朝食兼昼食を適当に作ってパソコンデスクへと運んでいった。