バウンス・ベイビー!



「体調がずっと良くなくてようやく病院にいったら検査検査でそういわれたらしい。セカンドオピニオンもサードオピニオンも聞いたけれど、どこの病院も返事は同じだった。命は伸びても2,3年が限度でしょうって。親は受験勉強中の俺には知らせずにいた。年が離れた兄貴には伝えたようだけど、啓二にはまだ黙っておこう、って。親はどちらも希望を捨ててなくて、きっといい治療法がみつかるって思ってたらしい。それがわかってから知らせようと。だけど夏休みに泊まった親戚の家で、伯父が俺の前で口を滑らせてしまった」

 高3の夏。

 私達が夏期講習に通い、希望を抱いて勉強をしていたあの頃に。

 平野はそんな衝撃体験を?

「俺が親父を問い詰めると、お前は勉強してればいいと言う。行きたい大学にいきなさいって。兄貴も、母さんのことは自分に任せろと。体重が減り続けていた母親も、それに賛成した。だから奨学金をとれるように勉強は続けた」

 平野は感情を最大限抑えたような声で話す。普段から掠れている彼の声は、低められてよく聞き取れないほどだった。

「・・・大学に受かって、さあ、これからは俺もバイトで稼いで、治療費を助けてあげられるってなった時、治療法があるかもしれないと聞いて、両親がアメリカへいくと言い出したんだ。会社を辞めて兄貴が一緒に行くから、お前はここに残って大学へいけと。俺はしばらく悩んだけど――――――ついていくことにしたんだ」

「・・・アメリカに行ってたの?」