バウンス・ベイビー!


 知らない道を走って走って40分後、ついたのは緑豊かな郊外の私立病院の前だった。

「・・・病院?」

 白亜の建物は、シンプルだけどお金がかかっているんだろうなあと思わせる外観。綺麗に等間隔で配置された緑が建物を包み込むように植えられ、一般診療の終わった病院の正面玄関は静まり返っている。

 道路の端に車を寄せて路駐した平野が、ふう、とため息をついた。

 訳が判らずぽかんとして見る私とは目を会わさず、暫く黙り込んだ後に、小さいけれどハッキリした声で言った。

「ここに―――――――母親が入院してるんだ」

「え」

 パッと運転席の平野を見た。彼はシートにもたれかかって、ウィンドーから病院を見上げている。

「平野の、お母さん?」

 入院してる?

 私は貰った情報に驚いて、そう繰り返す。平野は頷いた。

「胃の病気なんだ。ガンとかではないんだけど、ちょっと変わった難しい病気で」

「そう、なんだ・・・」

 話の展開についていけず、私は呟く。でも、急に、どうしてそんなことを?口をつぐんでしまった平野はしばらく病院を見上げていたけれど、くるっと私を振り返って見た。

「―――――高校3年の時、余命1年って言われてた」

 静かな声だった。

 私は言葉もなく、彼を見る。