バウンス・ベイビー!



 うっ・・・。まあ、それはそうですよね。一瞬詰まってしまった私は、コホンと咳払いをしてから再度口を開く。

「だって怒ってるのかと思って・・・。ついでに、嫌われたのかとも思ったし」

「左に同じ」

「・・・。それに作業場でも口きかなかったし」

 作業場?平野が呆れたような声で言った。

「何て言えばよかった?この間は無事に帰れたかとか、泣かせて悪かった、とか?高峰リーダーが耳をジャンボにして聞いているあそこで?つい先日リーダーに脅された俺が?」

 またぐっと詰まってしまった。一々その通りだから言い返すことが出来ない。今や悲しみではなくガンとした怒りを腹にためて、私は口調も荒くかみつく。

「もう、だからどこにいくのってば!?お腹も空いてるし、疲れてるんだけど!」

 せめて目的地くらい言え~!これじゃあ誘拐でしょ!平野は前を見たままで、手を伸ばして私の太ももをぽんぽんと叩いた。

 落ち着け。言われてないのにそう聞こえた気がして、ハッとする。

 前をむいたままの平野は、呟くように言った。

「あと10分ほどだから」