キツイ。やっぱり・・・これってキツイよね。ぐっと唇をかみ締めて、平野のいないベンチを見詰める。ああ、泣きそう――――――・・・
「あ、いたいた」
後ろから、声が聞こえた。
私はパッと振り返る。
平野が、息を弾ませながらこっちへ走ってくるところだった。揺れるマフラーとコート。寒さで鼻を赤くして、平野は私の方へと小走りにやってくる。
・・・平野、だ。あれは――――――探していた人の姿だ。
私は声が出ないままで、彼の方を見ていた。
「思ったより早かったんだなー、藤。先にこれると思ったんだけど」
そう言いながら平野は近づいてくる。
靴音。私にむかって来る、平野の姿。
・・・あ、何か。
ぽろっと涙が零れ落ちた。
平野は私の前まで来て、いつもの穏やかな顔で見下ろしている。私は両目から涙を零しながら、何も言えずに立っていた。
「・・・今日も泣いてんの」
平野の掠れた声が耳を通る。
「だって」
「うん」
「だって平野が・・・いなかったから」
あ、やばい、鼻水が出ちゃうかも、そう思って、私はやっと手を動かした。鞄からハンドタオルを出して顔に押し付ける。



