「あの・・・忘年会の時に酔っ払ったリーダーに言われたから」
冷たい風が公園内を吹き通って、平野が両手をポケットに突っ込んだ。
「それで?何て答えたんだ?」
「・・・いや、俺は藤を好きだと思う、とかそんな言い方だったの。かも、ってついていたような。だから私は冗談だと思って流して・・・」
ふう、と一度ため息を吐いたあと、平野は不機嫌な低い声で続けた。
「俺達が付き合ってること、何でリーダーが知ってるんだ?わざわざ教えたのか?」
カチンときた。その言い方に。それと同時に抱いていた恐怖心が消えて、かわりに怒りが芽生えてくる。一体何なのだ、どうして今こんな場所でそんなことを?
私はきっと平野を睨みつける。
「わざわざ教えるわけないでしょ!今年の初出勤の日に、見た瞬間に判ったんだって!誰かさんが私につけたキスマークで!」
平野がちょっと目を見開いた。驚いたらしい。
私はそれに勢いを借りる。
「リーダーはそれからも告白してきたわけじゃないし、付き合ってとも言われてない。だけど私が平野と付き合うって知ったときには言われたのよ!何かあったら俺に言えって、俺は社員を守らなきゃならないからって!」
平野は黙った。さっきまでの不機嫌な表情は消えている。
だけど私は止まらなかった。くすぶっていた胸の黒いもやもやが、怒りに触発されて出てきたようだった。



