「おはようございまーす」
私はそう言って作業場のドアを開ける。奥の事務所の中で、高峰リーダーと田内さんがおはようと返事をくれた。パートさん達はまだ誰もきていないようだ。
私はマフラーを外しながら事務所まで進み、壁に張られているシフト表を見る。
今日の出勤は・・・リーダー、田内さん、私、前園さん、浜口さん、そして、平野・・・。そうか、平野今日仕事だって電話で言ってたっけ・・・。もう1月の最後の週なのだ。繁忙期は終わりを告げ、秋には私があれほど望んだ平野啓二契約満了がやってくる。
そして、今も・・・若干でなくハッキリと、私はそれを望んでいるのがわかった。昨日の飲み会での吉田君からの情報は、私の中に強烈な葛藤を起こしていたのだ。
聞くべきか。それとも、聞かないべきか。彼の言ったことは本当なのか、平野本人に質すべきかそうしないか!昔のことなんだし今がハッピーならそれでって何も言わずに過ごすべきなのか、やっぱりちゃんと聞くべきなのか!
ちょっと暗い気持ちになったのが判った。
のろのろとエプロンを手にとって着ていると、見ていたらしいリーダーが私に言う。
「どうした藤?法事疲れか?暗い表情だな、朝から」
そうじゃないだろう、と思っている視線と声色だった。
私はハッとする。そうだ、平野に泣かされたらってリーダーは言ってたんだった!それは大変だ、万が一でも私の暗さが平野のせいだって思われたら――――――。
私はえ?ととぼけた表情で顔を上げて、意識して口角を上げる。



