懐かしいでしょう、そう言って笑う従姉妹が、私に言った。

「帰りに寄ってみたら?千明ちゃん。卒業した学校って、何かふといきたくなるよねえ」

 私は窓から外を見ながら、頷く。

 ・・・そうしてみようかな、時間はあるだろうし。


 美味しいけれど退屈な会食が終わり、そこで皆解散となる。私は家族と連れ立って、帰っていく親戚に頭を下げながら見送った。そして帰るぞー、と車に向かう父親に向かって言った。

「お父さん、私高校に寄りたいから、歩いて帰る」

「え?」

 父が振り返って、ちょっと首を傾げた。

「歩けば家まで結構あるだろう。なら学校の前でおろしてやろうか?」

「いいー。ちょっと食べ過ぎたから、運動がてら、ね。疲れたら電車に乗るよ」

「ふうん、判った」

 父の隣で母が聞く。

「晩ご飯はうちで食べて帰るでしょ?」

「うんそのつもりー」

 じゃあね、と手を振ってコートの前をしめ、私は一人で国道を歩き出した。

 まだ所々に田んぼが残るここら辺は、春夏秋冬風がよく吹き通る。手袋がなかったのでコートのポケットに手を突っ込んだままで、私は懐かしい高校まで歩いて行った。

 あの角を曲がれば、灰色の建物が見えてくるはず。それにクラブ活動の声も―――――・・・