一瞬でリーダーの機嫌が更に悪くなったのがわかった。

 ・・・あれ?私、今もしかして、失言した・・・?たら~りと、背中を汗が走るのを感じる。

 私服で髪を下ろしていると妙齢の眼鏡イケメンになる高峰リーダーが、眉間にくっきりと皺を寄せて目の前で唸っている。薄く細められた目に左端だけ持ち上げられた口元。綺麗な顔だけあって厳しい顔をしていると、世にも恐ろしい形相になる。背中から真っ黒の炎が上がったかと思うほどの迫力で、正直なところ、私は泣くかと思ったくらいにびびっていた。

「平野か。・・・それ、一応聞くけどレイプじゃないんだな?」

 返答次第では刃物も持ち出しそうな雰囲気だった。なにせ各種刃物が揃っている職場だ。私は両手をブンブンと振って懸命に否定する。

「ええ、はいはい、勿論違います!違いますっ!そんなことはないんですー!」

「ってことは合意か。それはそれでイライラすんな」

 リーダーの目が、メガネの奥で更に細くなった。

 ひょええええ~っ!一体どう話せば私は墓穴を掘るのをやめることが出来るのだろうか!過呼吸になるかもしれない、そう思えるほどに緊張して浅い呼吸をしていたら、高峰リーダーが舌打ちをした。

「どうせ藤が病気で気が弱くなってるところにつけ込まれたんだろう。くそ、案外手が早いんだな、あいつ。そんなところまでマークつけるなんて、絶対わざとだろ」

 高峰リーダーは片手で髪の毛をぐちゃぐちゃにかき回したあと、びびって泣きそうになっている私をちらっと見て、ふんと鼻を鳴らした。