平野はその日の夕方まで帰らなかった。
私は朝食の焦げたお餅を食べている時も、それから平野に誘われて初詣に出かける時も、さっき彼が言った言葉が頭から離れずにぐるぐるとまわっているのを感じていた。
体は貰ったから、心もくれないか?そう言った。しかもその後で、藤が好きだしって言った!!それって・・・多分、かなり、かーなりちゃんとした告白なんだろうって思うけど・・・。ってかこれ以上ないくらいに、正統派の告白なんだろうけど・・・。
何か釈然としないのは、何で?
そして、嬉しいのかそうでないのかが自分でも判らないのは、何で?
「寒いな~、でもこれでこそ新年って感じだよな」
アパートを出るなりそう言った平野が、一緒に歩く私の手を握ってくる。一瞬ぎょっとしたけれど、そのままでつながれていた。
嫌ではなかった。
ただ恥かしくて、自分が自分じゃないみたいだった。
平野と一緒に手を繋いで歩いているのが、信じられなかった。
だって昨日まで一人だったのだ。好きな人もおらず、誰かと付き合う自分など想像も出来ないで。
近所の神社は混んでいて、露天もたくさん出ている。私と平野は一緒に並んで、平野が話すことにぼーっとしながらも返事をしていた。
あまりにも色んなことが一度に起こったせいで、私の許容範囲はぺちゃんこに潰れてしまったのだろう。呆然としている間に御参りを済ませ、呆然としている間に屋台で食べ物を買っていた。



