――――――・・・あ、何か・・・すごい優しい顔・・・。

 こんな平野、見たことない。

 汗をかき、髪の毛がはりついている。苦しそうな切なそうな表情で、平野が小さく続けている。大丈夫、大丈夫だから。目を開けて、力抜いて。私は手をのばして彼を抱き寄せる。平野の全部が私の中へ入った時、新たな涙が一粒零れ落ちたのが判った。

「いっ、た・・・」

「うん、ごめん。でもその内・・・痛みは消えるから」

 苦しそうな声で平野がそう言って、ゆっくりと動き出す。痛みに唇を噛みながら、私はその揺れに体を預ける。全身に与えられる刺激に意識が跳ぶかと思ったほどだった。

 痛い。だけど・・・すごく、温かい。

 脳みそは溶けてなくなってしまったみたいだった。あれほどぺちゃくちゃと煩かった自分の声も全部消えて、私は平野で一杯になる。時折漏れる彼の声も、熱くて火傷しそうな体も、体同士がぶつかる音も、全部がやたらと愛おしかった。

 ああ―――――――平野が、ここにいるんだ。今は私を抱いているんだ。それって何て・・・素敵なことなんだろう。


 揺れる景色の中、私はついに笑顔になる。

 心の底から安心していた。

 全身で平野を感じていて、しかもそれに喜んでいた。