バウンス・ベイビー!



 唇が降って来る。平野は両手で私の手を捕まえて床に押し付け、ゆっくりと、だけど激しい口付けをする。生き物みたいに動く舌が、歯列をなぞり、舌を吸い、撫でては刺激を送る。展開についていけずに呆然とするばかりの私は、抵抗するタイミングを完全に失ってしまっていた。

「ん、んんーっ・・・」

 唇を柔らかく噛んで、平野は楽しそうに深い口づけをする。音をたてるキスに一気に上がりだす体温。私は目をぎゅうっと瞑ったままでただ驚いていた。

「この・・・雰囲気が・・・あれだよ」

 息継ぎの合間に平野が低い声で呟く。

「これからエッチしますっていう・・・雰囲気。そんで―――――」

 長い口付けが止んで、私はようやく目を開ける。もう頭ではものを考えられないほどだったけれど、平野が言う声は聞こえていた。

 腕を伸ばして自分の体を支えた平野の顔は、部屋の電気で逆光になっている。だけど、その目が妙にギラギラと光っているようなのが判った。射抜くような、そんな光を放った目だ。

「―――――これが、今すごく藤を抱きたがってる男の顔」

 ごくん、と私の喉が鳴った。

「だけど辛うじて理性は残ってる。どうしても嫌なら今言って。だけどそんなに嫌じゃないなら―――――――」

 野生の動物のような光る目を細めて平野が笑う。

「・・・今は俺に負けてくれ」


 こんな時は全然頭が働かないんだって、私は初めて知った。こんなに凄い力で流されていくものなんだとは知らなかった。もう理屈なんてどうでもよくて、ただこの人の体温を感じたいって思うだなんて。そんなこと、どの小説にも書いてなかったのに――――――――・・・