痺れた頭は役には立たない。私は既に言われるがままで、部屋の隅っこで、ヤツに抱きしめられたまま深いキスを受けていた。
「グラタンの味。美味いな」
平野が嬉しそうにそう呟いた。
世界から音が消える。自分の激しい鼓動も聞こえなくなる。感じるのは唇の温度。それから絡まる舌と、呼吸の苦しさ。
・・・うわ・・・私、もうダメだー・・・。
ガクンと足から力が抜けた。
「おっと」
平野が腕に力をこめて体を支える。私は息も絶え絶えで、うつむいて重力に体を任せていた。
「そうだよな、藤は病明けなんだった」
軽い口調でそう言うと、よっこいしょと掛け声つきで私をベッドに寝かせ、平野はにっこりと笑う。
「とりあえず、今日は寝な。俺が看病してやるから」
私はずるずるとベッドの上で毛布の中に入り込む。体中が熱くてどうしたらいいのか判らなかったから、毛布の中で丸まって激しい鼓動の音を聞いていた。
返事をする元気もなかった。



