相沢さんはどうしてもと言ったけれど、私は最寄の駅のホームまででいいですと送りを辞退した。

「でも湯沢に怒られるから、ちゃんと送るよ」

 いえいえ、と私は手を顔の前で振る。

「私の部屋はすごく近いんです。ホントに。まだ早い時間だし、大丈夫ですよ」

 そういう私に、それでも、と頑張っていたけれど、最後には諦めてくれて苦笑していた。

 電車のホームで、今日はありがとうございました、とお互いに挨拶をする。幸せになってください、彼女を諦めないで。そういった私に、彼は頷く。

「藤さんもね、大変だと思うけど、頑張って。自分が心地よいと思うほうへ行く努力をしてね」

「はい」

 駅でバイバイをして私は一人で部屋へと帰る。

 吐く息は白く、真っ暗で澄んだ冬の空へと上がっていく。気が清々していた。頭もクリアーで、煮詰まっていたアレコレが本当にちっちゃなことに思える。

 ああ、大事なんだな。心から遊ぶってこと、数年私は忘れていた。

 友達って有難いな。そう思って私は一人で笑っていた。帰ったら、仁美にちゃんと電話しなきゃ。