飲んでいたジンジャーエールを最後まですすって、相沢さんはゴミ箱へと入れにいく。戻ってきてから、コートを着なおしつつ言った。

「どうしても彼はもうご免だって思うのなら、彼氏が出来たって言ってしまえば?そうしたら干渉はなくなると思うよ、藤さんに恋愛感情を抱いているのならね、彼が」

 ふーむ。私は眉間の皺に気をつけながら唸った。彼氏が出来た、と言うことは簡単だ。ついうっかり口を滑らせました、の演技は必要かもしれないが、それくらいなら出来るだろう。だけど嘘をつくのもなー・・・。

 行こうか、と私を促しながら相沢さんは笑う。

「そんなに構えなくてもいいんじゃないかな。無視もしなくて、挨拶されたら返す、話し掛けられたら相手をする。だって職場の雰囲気を悪くするのはダメだからさ、普通にするんだよ。それで、2月までの間普通に相手をしてみて、もし、また彼を好きになってしまったら―――――――」

 ・・・もし、また平野を好きになったら?

 私は顔を上げる。

 相沢さんは大きくにっこりと笑った。

「またトライしてみたら。だってもう大人だし、また違う結果になるかもよ」



 その後も、結局閉園まで私達は遊んでいた。

 全部の乗り物を制覇して(お化け屋敷以外よ、勿論)、何度も乗った回転コースターで声を枯らして、笑い疲れながら遊園地をあとにする。

 冬の寒さを感じなかった。誰かと一緒にいて一日中遊ぶなんて本当に久しぶりで、体は疲れていたけれど、頭は幸福感で一杯だった。