「ホント新鮮だな、こんな面もあるんだ。もしかして藤って短気?」
「うるさいわね」
「誰と約束?24も25もって、相手は男?」
「黙れ」
「どっちかだけでもいいからさ、ご飯ご飯」
「お断りします」
「何で?」
え?
私はつい振り返った。
何でって――――――――――
平野と目があった。
その時、二つ目の駅へと電車が滑り込んで、ブレーキで少し体が揺れる。ドアが開いて冬の風が髪の毛を揺らしたとき、私はそのままでパッとホームへと降りた。
平野はえ?と呟く。私の最寄の駅はもう一つ先だからだろう。ドアのところで目を丸くしている平野を置いてけぼりにして、私はホームの上をスタスタと歩いて行った。
ここはほどほどに大きな乗り換え駅だから、人の数が多かった。すぐに通勤客にまじって、ヤツが顔をだす電車は視界から消える。
どうして今になってそんなひっついてくるのよ!怒りか悲しみか判らない感情がお腹の底の方で渦巻いていた。それが気に食わなくて、私はかなりの仏頂面だったに違いない。
結局口を引き結んだままで、私は自分の部屋までの一駅分を歩いて帰った。
寒さも感じなかった。



