バウンス・ベイビー!



 仁美たちとの飲み会は24日のことだ。だけど、心の平安のためにもここは断りたい。そう思った私は首をぶんぶんと縦に振りまくった。

「そうそう、どっちも!」

 ふうん、と平野は呟くように言う。

 ホームへと滑り込んできた電車が、ゆっくりと目の前で停まった。私は救われるような思いで乗り込んで、平野を見ずにドアのすぐ横へとひっついて立つ。すると同じようにやってきて隣に立った平野が、首を傾げながら言った。

「藤ってさ、今彼氏いないんだよな?」

「え」

 口元が引きつったのが判った。・・・どうしてそれを知っている?まるで気持ちを読んだみたいに、平野がふっと笑う。

「リーダーが初日に言ってたんだ。今ここで働いている独身組は、誰もパートナーがいないんだぜって。残業を押し付けやすくて助かるってさ」

 ・・・リーダー、なんちゅー要らんことを・・・。揺れた時用のてすりに掴まって、私は心の中で高峰リーダーに呪いをかける。残業なんて滅多にないけれど、今度からは頼まれても断ってやる。

「それが何よ」

「好きなやつはいるのか?」

 さすがに小声になって平野が聞く。私はぐっと口を引き結んで答えないことにした。いねえよ!と叫ぼうが、いるけど何か!?と叫ぼうが問題だ。ここは公共の電車の中だし、興奮するのも大変宜しくない。それに残念なことに、思い人はいないのが現実だ。

 一つ目の駅が見えてきた。私はそれだけを窓からじいっと見詰めて、平野のことを無視しようと頑張る。