今年はそんなに暑くない夏だった。

 そういう年は、冬もさほど寒くならないらしい。

 嘘かホントか判らないけれど、そういうことを、パートのおばさまが楽しそうに喋っていた。

 私は帽子からはみ出て顔の前に落ちてきた前髪一房をふうっと息で飛ばしたあと、くるりと後ろを振り返って言う。

「北浦さーん、まだ今日はせせりがあと280本ありますよ~」

「大丈夫よ、千明ちゃん!喋ってないと手が動かないんだからあたしらはさ!ちゃんと働いてますよ~」

 ガハハハハと明るい笑い声が木霊する。本当、このおばちゃん達はいつでも元気で陽気なのだ。私はつられて笑ってしまい、隣のテーブルからリーダーの高峰さんがじーっと見ているのに気がついて表情を引き締めた。

 ・・・やば。がっつり見られてるよ!

 だけどお咎めはなしだった。やれやれ。

 私は目の前の串をちらりと確認する。数が少なくなっているから、これでは最後までもちそうにないなと判断し、リーダーを見た。

 視線を感じたらしく、また高峰さんが私を見る。

「串、取ってきますけど、そちらは大丈夫ですか?要ります?」

「こっちは大丈夫。あっちは足りないんじゃないか」

 リーダーの一言に私はおばさん達の手許をチェックする。本当だ、こっちは串がなくなりそうだ。

 じゃあ取ってきまーす、そういって歩き出す私の後ろから、おばさん達の明るい声が追いかけてきた。

「ねー?千明ちゃん、あたしらちゃんとやってるでしょー?」

 ガハハハハ!彼女らは一々笑うので、いつでも雰囲気は明るい仕込み場、それが私の職場だ。