すると、さっきはいなかったはずの薫が、扉の前に立っていて、その手には、バラの花束を持ち、かすみの前まで歩いてきた。

そして跪き、その花束をかすみに差し出した。

「…かすみさん、付き合ってまだ日も浅い。それでも、俺にはかすみさんしかいないと思った。…俺と結婚して下さい」

「…薫」

サプライズプロポーズだ。

…最近ずっとすれ違っていたのは、この日の為に、準備をしてたから。

「…かすみさん、返事を下さい」
「…はい、私でよければ」

かすみの返事にクスリと笑う薫。

「…俺は、かすみじゃなきゃいやだよ」

その言葉に、かすみは、涙を流しながら抱きついた。

「私も薫じゃなきゃいや。私と結婚して下さい」

それを見守っていたみんなが拍手喝采。
…その中には、岳の姿もあって、かすみは困惑した。

「…専務」
「…このことは、知ってたんだ」

「…え⁈」
「君が好きなのは本心だよ。でも、西園さんの熱意に負けた。…最後のイタズラくらい、多めに見てね」

そう言うと、ウィンクした岳に、眉間にしわをよせた薫が、かすみを見た。

「…何されたの?」
「…な、なにも」

「…ふーん、そんな態度とるんだ?…ふーん、後でお仕置きが必要みたいだね?」

そう言って、ニコリと笑った…その笑顔がなによりも、怖いと思うのは、かすみだけだろうか?