「…はい!すぐ行きます!」

そう答えたかすみは、岳から逃げるように離れると、ドアを開けた。

「…チーフ助かりました」
歩きながら、悠人に礼を言ったかすみ。

「…別に俺は何も。…専務と何かあったのか?」
「…まさか!…何も。…ところで、お客様って?」

突っ込まれては困ると、かすみは話をすり替える。

「ん?あー、今日の仕事は全部終わってんだろ?」
「ん?…はい。事務処理も終わって、専務にコーヒーを淹れようとしてたくらいですけど?」

…噛み合わない会話に、かすみは首をかしげる。

「…そう、いいタイミングだったんだな。良かった」

「…何がですか?」

「…いや、こっちの話」

「…あの、こんな所にお客様ですか?」

不思議に思うのも無理はない。かすみが連れてこられたのは、チャペルのドアの前。

不安げに悠人を見上げれば、悠人は、ニコリと微笑んだ。

「…そ、この中」

そう言うと、大きな扉を開けた。

…すると、中には、たくさんのスタッフが赤いバラを一輪ずつ持ち、かすみをまっている。

「…チーフ?」
「早く、みんな待ってる」

「…」

不安な気持ちは拭えないまま、祭壇の前に向かって歩いていく。すると、みんなが手に持つバラを、かすみに渡していく。

貰い終わるのと同時に、祭壇の前に着いた。

「…かすみさん」

大好きな人の声に驚き振り返る。