車を降りると、薫は、後部座席から何かを取り出し、かすみに渡した。

「…赤いチューリップと、かすみ草」

透明の箱に入れられた二つの花。

「…本当は、告白する時に渡そうと思ってたんですけど、焦ってかすみさんのところに行ったので、家に忘れてしまって」

赤いチューリップの花言葉は、愛の告白。

「…ありがとうございます」
「ブリザードフラワーなので、枯れずにずっとそのままですから、お部屋に飾って貰えると嬉しいです」

「…ブリザードフラワー…聞いた事はありましたけど、実物は初めて見ました。生花で作るんですよね」

「えぇ、もし良かったら、今度一緒に作りましょう」
「え⁈いいんですか?」

「もちろんですよ。使いたい花を探しておいてくださいね」
「はい!」

満面の笑みで、頷けば、薫はフッと笑った。

「…それじゃあ、帰りますね」
「…はい、気をつけて」

…誰もいないのをいい事に、薫はチュッとかすみの唇に口付けて、車に乗ると、帰って行った。


…。

「…ゴホッ」
「…⁈お、お父さん!」

…、いつから見ていたのか?父にキスしたところを見られ、赤面するかすみ。

「…どこで誰に見られてるかわからないんだから、道端でそんな事はやめとけよ」

「…///」

そう言うと、父は家の中に入って行く。かすみも俯き加減で、家の中に入って行った。