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「…遠藤、プランナーになって2年だぞ?そろそろ一人で何でもこなせるようになって欲しいな」

オフィスの遠藤の机の前、2人で椅子を並べて、お客様のプラン確認をしている。悠人の言葉に、遠藤は、苦笑した。

「…すみません。でも、せっかくの結婚式でミスはしたくありませんから。喜んでる顔の新郎新婦が見ていたいんです」

遠藤の言葉に、悠人は優しく微笑む。彼女はいつも真面目に一生懸命にお客様の事を考えている。そんな彼女が、悠人は、好きだった。良き後輩プランナーとして。

…そして、一人の女性としても。

だが今は、悠人は自分の気持ちを告げるつもりはなかった。焦る必要はないと思ったからだ。遠藤は今、仕事だけで、手一杯と言った感じだからだ。

恋と仕事を両立出来る器用な性格ではないと、この2年見ていて分かったから。

「…遠藤、かすみ」
「…はい?」

突然フルネームで呼ばれた遠藤、かすみは、首を傾げた。

遠藤かすみは、…薫の花屋を毎月1日に訪れるあの謎の美女だったのだ。

「もうしばらくは助けてやるが、ちゃんと一人前のプランナーになれよ」
「…はい」

悠人の言葉に、はにかんで返事をしたかすみ。

「…さて、西園さんの様子をもう一回見てくるか。セッティングの確認もしないといけないからな」

「…チーフ」
「…ん?」

「…私も行った方がいいですよ、ね?」

かすみの言葉に、悠人は怪訝な顔をした。

「…当たり前だろ?俺と遠藤の担当なんだから」
「…ですよね。ちょっと言ってみただけです」

そう言うと、かすみはセッティング一覧のバインダーとボールペンを持つと、席を立つ。悠人も立ち上がると、かすみの一歩前を歩き出した。