最後の言葉に、かすみはドキッとした。

「…私には…気を許せるんです、か?」

…丁度、信号が赤に変わって車が停まる。

「…そう言う事になりますね」

前だけを見ていた薫が、かすみの方を向きニコッと笑った。

「…不思議な事に、私も同じ気持ちなんてす」
「…え?」

かすみの言葉に、薫は驚いたような顔をした。が、信号が青に変わってしまい、薫は慌てて車を走らせた。

それからしばらくして、かすみの家に着いた。

「…ありがとうございました」

そう言うと、車を降りようとしたかすみの手を、薫がそっと掴んだ。かすみは驚いて、薫を見た。

「…あの?」
「…さっきの、本当ですか?」

「…え?」
「…かすみさんも、俺に気を許せる?」

一瞬考えたかすみは、恥ずかしそうな顔をして、頷いた。

薫は嬉しくなって、思わず、かすみを抱き寄せてしまう。が、かすみの耳が真っ赤な事に気付いた薫は、慌てて離れた。

「す、すみません、つい、嬉しくて」
「…い、いえ。そ、それじゃあ…」

「…はい、おやすみなさい」
「…おやすみなさい」

…玄関の中に入って、かすみは深呼吸した。ドキドキがなかなか収まらない。

…抱きしめられて、驚きはしたが、嫌ではなかった。…むしろ、嬉しかった。