フラワーガーデンに着いた2人。薫は何を言うでもなく、その場に突っ立ったままのかすみの手を取ると、店内に連れて行き、片手で椅子を引くと、かすみを座らせた。

その場から離れて、どこかへ消えた薫だったが、間もなくして、手にカップを持って現れた。

「…ハーブティーです。落ち着きますよ」

そう言うとテーブルの上に置き、向かい側の席に腰を下ろした。…やっぱり薫は何を言うでもなく、静かに座って、花を眺めてい。

…この空間が、とても居心地がよく、かすみは、ハーブティーを一口飲んだ。

「…美味しい」
「…それは良かった」

かすみの言葉にそう言って、微笑んだ。すると、かすみも少し笑みを浮かべた。

飲み終わる頃にはすっかり落ち着いて、かすみは薫に礼を言う。

「…ありがとうございました。落ち着きました。…そろそろ失礼します」

そう言って立ち上がる。それに続き、薫も立ち上がった。

「…もうこんな時間です。…終電もありませんから、お送りしますよ」
「いえ、そんな…申し訳ないので」

「夜中に1人、女性を帰すなんてことはできませんから…ここは、素直に甘えましょう」

「…すみません」

…今日は仕事用ではなく、プライベートの車。

車が発進しても、薫は特に何も話さないし、泣いてた理由にも触れない。

「…西園さんは、どうしてそんなに優しいんですか?」

外を見たまま、ポツリと呟いた。

「…誰にでも優しいというわけじゃありませんよ。俺も、完璧な人間じゃない」

「…そうですかね?…あの、前から思ってたんですけど、西園さんて、『私』と『俺』って使い分けてますよね?」

「…ぁ、バレてました?仕事用と、プライベート用ですよ…あまりプライベート用を使う事は無いんですけど…気を許せる人にしか使わない」