「…とても気に入りました。それじゃあ、ヒデンスと、かすみ草を合わせて花束にしてください」

「ありがとうございます。それではしばらくお待ちください」

彼女に頭を下げた薫は、かすみ草を取ると、カウンターで花束を作って渡した。

「…かすみ草、好きなんですか?」
「…え?」

薫の言葉に、一瞬キョトンとした彼女だったが、質問を頭で再確認しクスッと笑い、そして頷いた。

「…えぇ、好きです。私と同じ名前なんです。母がかすみ草が好きで、その名をつけてもらったんです」

「…そうなんですか。それでは、お客様のお名前は、かすみさん?」

薫の言葉に笑顔で頷いた。薫は嬉しかった。彼女の名前が知ることができて。

「…それじゃあ、私はこれで」
「…また、お越しください」

…かすみの姿が見えなくなるまで、薫は見送っていた。

かすみがフラワーガーデンに来るようになって一年。なぜ、毎月1日にやってくるのか?その理由はわからない。

だが、まず一つ、かすみの名前を知れた事。…少しずつ、かすみを知る事ができたらいいなと、薫は思った。