だが、なぜだろう。
七瀬さんを放っておけない。
そう思う自分は何かおかしいのだろうか。
流れに身を任せてしまうのは俺の体に染みついたものだ。
そもそも俺は自分が進むレールを親に決められて育ってきた。
ただ自分にできることは、それに恥じないよう、ただ進むだけ……。
もちろん、異性との交友関係であっても親が全てを決める。
たとえそれが、俺の将来を決める許嫁であっても……。
『好いてもいない人間と付き合うなんてどうかしている』
「今さら言われても困る……」
静かな空間で、俺はどうにもならない未来を思い、独りごちた。
時期に初夏を迎える風は思いのほか強かった。