わたしの耳元で低い声が優しくささやく。 吐息が耳に当たってくすぐったい。 どうしよう。 ものすごくドキドキする。 「は、はい。ありがとうございます……」 ドックン、ドックン。 緊張しているおかげで声が震える。 わたしの声は自分が思っていたよりもずっと小さくて、大きく鼓動している心音に掻き消されるような気がした。 「ここは通路の真ん中だからね、人とぶつかる確率は高いんだ。とにかく座った方が良い」 志月さんはそう言いながら、体勢を崩したわたしが起き上がるのを助けてくれる。