彼女があまりにも悲しそうだったから、つい風習に従ってしまっただけのことだ。


 それにどうせ俺は残りあと一年もこの学園にいない。

 卒業してこの学園から離れてしまえばすべてが終わる。

 彼女だってすぐに好きな人くらいできるだろう。

 ーーいや、あんなに可愛らしいのだから恋人だってできるに違いない。



「彼女、可愛いよね。大きな目に細い手足。背だって小さいし。性格も他の女子みたいにがっついてないっていうか……今どき純情で初心(うぶ)だし?」

「突然何を言い出すのかと思えば、お前はいったい何が言いたい」