「中谷さん!娘さんの意識が戻りました」





社長と俺、そして田中は座っていた椅子から、勢い良く立ち上がる


「無理させないように!少しだけですよ」


面会が許された



無表情なまま天井を見続け、瞬きをする

涼の頬を撫で「おはよう よく寝たね」

そう、社長が言う

「涼さん…すみません
俺…涼さんが、姉とかしらなくて…え?」

涼は、ぷるぷる震えながら

手を田中に出した

「け…すけの…チョコ…ちょ…だぃ」

「チョコは、もうあげられない
何が好き?涼さんが好きなの持ってくる」

「け……の……チョコ」

「涼さん…チョコは、もうないんだ」

「ちょ…だぃ」

「……くっ」

田中が、涙をこらえられなくて
涼から目をそらした


「涼、プリンにしよう!
おいしいプリンだ!」

「プ……リン……すき」

「うん!プリンおいしいもんな?」

「かず……くん…プリン……ちょ…だぃ」

「うん!おいしいの買ってくる!」

「なん……で?な…てる…の?
かず…くん…け…すけ……わたし……
ごめ……なさ……ごめん……なさ…」

「涼、もう謝らなくていい
こいつも悪かった
涼が元気になったら、こいつに美味いもの
作ってやって!」

「涼さん!俺…カレー食べたい!」

「ははっ お前もカレー好きなの?
涼もカレー好きだもんな?
やっぱり、姉弟だな!!」

「涼は、お父さんの作るカレーが好きなんだよな?」

「ふふっ 好き」



ふんわり笑って、また眠った




その日から

目覚める度に、〝チョコ〟〝桂介〟

を連呼する


時には、訳の分からない事を言って
ベッドから落ちたりした


会話が出来なくなった



病気が進むのが、早すぎて



また、昏睡状態になった