介護士に車椅子を押され

涼が現れた


介護士が部屋を出ると


涼が車椅子を動かして、田中の前へ


ニコッと笑って手を出す


「今日は、持ってない…」


田中が涼に視線を合わすべく、膝をついた


「俺…あんたのこと、怨んでた」


涼が田中の頭を撫でた

そして…

いつも持っている鞄の内側から


ボロボロの紙を出した


〝涼 ごめん〟


たったそれだけの文字に、田中は

泣いた


「兄ちゃんの字だ……兄ちゃん……」

涼は、無表情のまま田中を撫でた



「皆にチヤホヤされてるあんたが
憎かった 兄ちゃんの夢まで奪って
幸せそうに笑っているのが、許せなかった
俺から家族を奪って、自分は弟と仲良くやってるなんて!許せなかった!」


「……ごめんなさい」


涼が喋った


「私のせいで…… ごめんなさい」


そう言って、車椅子からずりずりと
降りて田中を抱きしめた


「私が…悪いの……ごめんなさい」


ポロポロと田中の目から、涙が流れた


「もういい……わかったから
教えてよ……
何で、俺の家族は、自殺したの?」


ダラリと田中にもたれ、田中を抱きしめていた手はプランと下がった


「おい!なんだよ!!」


俺が涼の体を触ると、熱かった


すぐに病院に運ばれた



「再発しています
進行がとても早いですね
前回の検査からそんなにたってないのに…
再移植が必要です」