社 「その日記をドクターから渡され
  涼を守る為に、ここに来たんだ
  誰にも知られてないはず
  なのに… 涼がいつの間にか酒を飲ん
  でいたり、さっきみたいにチョコを
  あれがもし、毒だったら…」

社長の目には、薄ら涙が…

社 「涼は、高次脳機能障害と診断された
  だが…意思がはっきりしている」

破りとられたスケッチブック

〝もうここには こないで
わたしのことは ほっといて
わたしにちかづかないで
だれもつれてこないで〟


社 「心配なんだろう…
  だが…私は、涼を…娘を守りたい
  このままでは、病気の再発や合併症で
  涼が死んでしまう…」

ナ 「涼にどこで手に入れたのか
  聞いたらいいじゃないですか?」

社 「教えてくれなかったよ
  涼は、俺達を守るために
  死のうと思っているんだ…」


「目覚めましたよ」


介護士が呼びに来た


また、隣の部屋から様子を見る


「涼ちゃん?コレ誰にもらったの?」


人差し指を口に当てた


「内緒にしてっていわれたの?」


首を横に振る


「コレは、涼ちゃんの体には毒になるもの!
食べちゃダメだよ!
ほら!あかりちゃんも怒ってるよ!」

人形で涼をペチペチ叩く


「ダメだからね!」


人形を抱き寄せ、布団に入れた

人形をヨシヨシしながら、眠る


「もう、都合が悪いと寝ちゃうの?
もしもし?涼ちゃん?」


反応しない為、介護士が部屋を出て

こちらへ


すると涼があかりちゃんを高い高いして
フリフリして遊びはじめた

介 「やっぱりタヌキ寝入りだった…」

布団から出て、あかりちゃんを抱えたまま
力の入らない足を引きずる
車椅子のスケッチブックをとると
左手でペンを持つ

だが、書こうとしない


そのままペンを置き

ゴロンと横になる


あかりちゃんのほっぺにキスして
撫でる


朱 「姉ちゃん… 俺…ここだよ」


泣き虫な朱里が、見てられなくなったようで、しゃがむ

介 「朱里君 ひとりで部屋入ってみる?」

介護士の提案で、朱里が行くことに


扉が開くと涼が朱里の姿をとらえた

「姉ちゃん」


あかりちゃんをぎゅうっと抱き

無表情なまま


朱里が、そっと涼を抱きしめた


「姉ちゃん…大丈夫だから!
俺!お兄ちゃんになったから、ちゃんと
姉ちゃんを守る!そばにいる!
元に戻って…」


右手にあかりちゃんがいるから
左手を出して、朱里の背中を撫でた

「姉ちゃん!!」

朱里の涙腺が崩壊した


そして…


本棚から、チョコレートを出して
包み紙をとってから、朱里の口に入れた



「俺…チョコレートも酒も嫌いなんだけど」


朱里が、顔を歪めて言った

スケッチブックをとり左手で


〝うそつき
ほんとはすきなのしってるよ〟


「姉ちゃん、コレ誰から?
あとどれくらい隠してんの?」

〝おしえない
あかりはわたしがいなくても
あたらしいかぞくとしあわせになれる
わたしはもういいの
あかりちゃんがいるからだいじょうぶ〟

「やだ…」

朱里が、また泣くと

ごそごそ、チョコレートがまた出てきて
朱里の口に入れた

そして、みたことのある仕草をした

あ…

アレだ


イルカの涼をショーのプールから出す時の


「俺…イルカじゃねぇし」


〝かえって〟


朱里が、しぶしぶ「また来るから!!!」

って、吐き捨て部屋をでた


ひとりぼっちになると、涼はポロポロと
涙をながした

それは、不思議なほど無表情なまま


何度もあかりちゃんを撫でながら