ごちそうさまをした後


鞄から、折り紙を出した


「折り紙は、後にしようか?」


社長が止めるが、首を横に振る

そして、せっせと折ったイルカを皆に配る


朱里と桐川さんだけ、右手で渡した


皆が涼にありがとうと言うと

〝おいしいのありがとう〟

そして、また飛行機を折り、社長に褒められてから投げた


意味があるはずだ

あるはずなんだ



涼が右手でペンを持った


〝おとうさん といれ〟


「ちょっと、行ってくるから
くつろいでてくれ」



社長と涼が部屋から出た後


桐川さんがスケッチブックを手に取った


内容を確認している

俺達も覗く


〝あかりがいない〟

〝あかりにすてられた〟

〝あかりにきらわれた〟

〝うそつき〟


〝しぬまでそばにいてって
        おねがいしたのに〟

〝しにたい〟


繰り返し書かれていた

朱里への気持ち…


そのどれもが、右手で書いたような?


時々、介護士との会話があった



戻って来た涼に


「ケーキ、結局、福来が作ったんだ!」


俺がそう言うと、首を傾げる


〝わからない ごめんなさい〟


右手で書いた


最近の事は、ダメなんだっけ?


「社長?涼ちゃんの記憶は、どこら辺まで
あるんでしょうか?」


桐川さんが聞く


「さぁ 病気をしたことは、なんとなく
でも、曖昧でね
君達が、この前来たことも覚えていないよ」


「涼ちゃん?俺達、結婚するんだ!
結婚式に来てくれないか?」

「涼?来て?」


桐川さんと三重野さんが、お願いすると


〝いかない〟


左手で書いた





やべえ 全く俺にはわからない…

田島もむりだろな…




「桐川君、こんな状態だ…
この前も断ったが…式は、無理だ」




あっ 



「涼!水族館いかないか?」


突然の俺の提案に


〝いきたくない〟


右手で書いた



行きたいんだ…くっそ可愛いくみえてきた

「福来と晃喜と行こう!」


〝ぜったい いきたくない〟


確信した


皆がスケッチブックに視線をやる時

北村… じゃねえ、ナツの事チラッと見る

それに気がついた俺の方もチラッと見る


〝こんなんでそとにおでかけしたくない
しんだほうがまし〟


右手で書く時、チラチラ見てくる


可愛い~



涼は、無事なんだ!