とある豪華な施設の面会室を貸し切り

涼を待つ

トントン とノック

「失礼します」


車いすに乗った涼は、見るからに前とは

別人レベルに、無表情だった


「お友達がいらっしゃると聞きまして
ちょっとおめかししたんです!
どうぞ、ごゆっくり!
何かあったら、お呼び下さい!」


明るい介護士が言った通り、涼はほんのり
化粧して、髪の毛をセットされていた


「涼 ここにいるの誰かわかるか?」


涼は、コクンと頷く


「全員?」


また、コクンと頷く

混乱しないように、俺達からは
声をかけないように言われている

段取り通り、社長が話す


「朱里は、大学卒業して、彼らの会社に就職したんだ
田島君達は、去年結婚したそうだ
有瀬君が朱里を引き取ってくれて
桐川君は、涼の紹介した子と今年、結婚するそうだよ」

社長が話し終わると、涼は膝に乗せてる鞄から、折り紙を出して織ろうとした


「折り紙は、後にしようか」


社長に止められると、折り紙から手を離した


涼の車いすの後ろから、スケッチブックと
ペンをとり、涼の前に置く

「何か皆にお話ししたら?」


社長が促すと


左手でペンを持った



「こっちの手」



社長が言うと、ペンを右手に持ち直した




〝ずっとそばにいるっていったのに
どうしてすてたの〟



書いたのは、朱里に向けた言葉…


「それは、説明しただろ?
涼は、手術するのに朱里と離れないと
いけなかったんだ…」


〝しんだほうがましだった〟


そう書いて、ペンを置いた


俺達が衝撃を受けている間に


また折り紙を出し、折りはじめた


飛行機を折り、出来上がると社長に見せた


「上手だな」


褒められてから、飛ばした



「涼 さっきこれに何書いたか覚えてる?」


社長の方を向いて、首を横に振る


朱里への言葉は、すでに記憶からなくなったのか?


ボーッと机の1点を見つめ

無表情な涼に、声をかけた


「福来と晃喜のこと、覚えてる?」


俺の方を向いて、コクンと頷く

よかった



〝もうすぐたんじょうび
      けーきつくって〟



左手でペンを持ち、そう書いた


両利きだったんだ


じゃなくて!!



「涼の誕生日は、クリスマスだろ?」


社長がそう言ったが

福来の誕生日のことだ!


涼は、しっかり記憶がある


福来は、手作りのケーキが好きで
買ったケーキは、食べない


一昨年、水族館で働いてたから

ケーキの代わりに夕食作ってくれて

そう言う話した


その時の事、覚えているんだ…