すでに面会時間は、すぎている

それでも、すんなりと病室に案内された


2人で深呼吸して、部屋に入る


朱里が、フラフラと涼のそばにある椅子に座る


「また、有ちゃんにお世話になったの?
朱里…
朱里が、大学卒業するまで頑張るからね
だから…
私が死ぬまで、そばにいて…」


愛おしい弟をおぼつかない手で撫でる


死ぬなんて、何言ってんだ?


「姉ちゃん… 一人にしないで…」

「ふふっ 泣かないの
男の子なんだから!
私がいなくても、大丈夫でしょ」

「どこが悪いんだ?」

聞いた俺の声は、震えていた


「肝臓
お酒の飲みすぎ…自業自得なの へへっ」

「治療法は?」

「この前の入院で、薬が効かない体質だってわかったから、移植を勧められた」

「俺の肝臓あげる!!」

「朱里は、A型 私は、O型だから駄目」

「お父さんは!?」

「……仕事辞める前に、聞いたら
断られちゃって…
へへっ
私が辞めて、便利な道具が減ったから
困ったんでしょうね
再婚相手の息子と結婚するなら、肝臓くれるって言い出して……
前の私なら、どんなことしてでも
朱里の為に生きたいって思ったはず
でも… ごめん 朱里…
好きでもない人と結婚したくないの
あんな人の肝臓…貰いたくないの
死んだほうが… ごめんね」


泣きながら、一生懸命に死ぬことを選んだ

その理由を話してくれた


「俺と結婚して、俺の肝臓移植したらいい
俺もO型だから」


涼の涙を拭きながら、笑いかけた


「子供達がいるんだから駄目!」

「でも、涼が好きなんだ
いなくなったら、困る…」


益々涙が流れる


「私だって…
有ちゃんが、好きなんだよぉ
離れたくないよ
朱里とずっと一緒に居たいよぉ
だけど……
ドナーだって、副作用が出る場合があるって言ってたもん
道連れには、出来ない!」


「また明日、来るからな!」



あんまり長く話をしていたから

看護師に帰るように言われた