本格的に製造を開始するために

工程訓練が行われる


N社 社長が視察にくるから気を引き締めろとのこと


強面達すら、ピリピリしてる



秘書になった涼も、同行していた



クリーンルーム内で、強面達になにやら
ご立腹… やべえ なんだろ…

桐川さんと俺と田島が、近づくと


涼が、近くにあった工具セットをコロコロ押してきた


「そんなに言うなら、ご自分でされたらどうですか? 勉強させて下さい!」


どうやら、機械のちょっとしたバランスが気にくわないそうで…

そんな微妙なことを涼も出来ないと言ったが、納得しないので… 

涼が社長に言ったのだ


社長に睨まれても


「どうぞ」


とかいって、促す


社長の手つきは、涼と同じくらい早くて

目で必死になって追いかけた


すげ……



微妙なバランスをキッチリと合わせた


「鈍ってないですね」

「まあな」


工具セットを元の所に戻す際、強面達から


口を慎めと怒られていた



菅原がコソッと言ってきた


「何言っても、社長は怒らないですよ
佐々木さんは、社長のお気に入りですから
本当…愛人じゃないかってくらいに
仲がいいんですよね~」

「へぇー」


休憩へ向かうときだった


「こちらの桐川君が、佐々木にお似合いだと思うんですよね!!」

強面が社長に桐川さんを推薦した


「いつまでも、魚と遊んでいるわけにいかんな? 桐川君とお付き合いすればいい」

「何、言ってるんですか?」

「是非!! お付き合いしたいです!!」


またまた桐川さんが、がっついた


「私は、恋愛どころじゃないので…」


逃げようとしたが、社長から


「今まで、浮いた話もなかったんだ
少し、前に進んでみて
駄目そうなら、きちんと断ればいい
桐川君がどんな人間か知ってからでも
いいんじゃないか?」


「あの……佐々木さん
明日、休みですよね!?
俺とデートして下さい!!!」


桐川さんは、男の俺から見ても、いい人

頼り甲斐あるし、優しい

気配りもリーダーシップもある

仕事が出来て、後輩を育てるのもうまい

最高の上司だ


こんなふうに、真っ直ぐに想われたら


「私、デートしたことなくて……
それでも、いいですか?」

「もちろん!!!」


強面達は、もう結婚とか騒ぎ

社長は、ニコニコと涼に微笑んだ


涼は、ぎこちなく桐川さんと笑っていた




多分……




これが正解なんだ



桐川さんなら、涼を幸せにしてくれる



涼が踏み出した一歩を応援してあげたい



「有瀬……お前は、いいのか?」



立ち止まったままでいいのか?って?



「俺には、子供達がいるからな」



ほんの少し


ときめいたこの数カ月


ヤキモチ焼いてばかりの器の小さな自分に


さよならすると決めた




「人の幸せを願える男になるぞ!!」

「有ちゃん、本当…いい人だね…」