8時半。
私は職員室で広瀬先生という担任と話をしていた。
「…ネックレスのこと聞いているよ。本当は違反だけど形見と言われちゃ仕方ないから見逃すけど、できるだけ他の生徒には見られないよう気をつけなさい。体育の時は特に。」
聞き入れの良い学校だな。
そう思いながらも、優等生ぶって返事をする。
敬語で話すのってこんなにむずかゆいんだな。
なんて、これまたどうでもいいことを考える。
「よし、そろそろホームルームの時間だから、行くぞ。合図したら入ってこい。」
「はい。」
広瀬先生の背中を眺めながら、私は色々なことを考えていた。
それから、教室の窓から見えない所に待機させられ、先生の合図を待つ。
「…入って挨拶しろ。」
私は深呼吸を1回し、肩の力を抜き、教室に足を踏み入れた。
「西条高校から転校してきました、真城 美月です。たった1年ですが、よろしくお願いします。」
クラスメートの反応は、明らかにがっかりしている人と、どこかホッとした表情をしている人ばかりだった。
多分、あれだよね。
どんな転校生が来るかっていう噂が広まってて、おそらく美人だとかイケメンだとか、逆に凄い不良だとか、根拠のない期待があったんだろう。
私は席に着き、興味もない小説を休憩時間のために用意した。
本読んでたら、誰も話しかけてこないでしょ。
