リビングに降りると、ソファーの前にある机の上に、一枚のハガキが置かれているのが目についた。

「あ、りさ。それ、お願いね~」

気配に気づいたお母さんが、キッチンから顔を出して言った。


さも当然のように私をパシろうとするところが、若干腹立たしかったが、

「わかったよ」

と、渋々ハガキを手にして家を出た。




**.




ポストには、とても早く到着した。


…まあ、家を出て左に進み、突き当たりを右に曲がり、そのまま大通りに出ればすぐなのだから、当たり前だ。


道端に佇む赤いポストは、いつもとなんら変わらない。


──しかし、その赤の前に、グレーのパーカーに黒のスキニー姿の男が座り込んでいるという、些か異常な光景が、そこにあった。


手に茶封筒を握っているあたり、ここにそれを出しに来たのだろう。


いやしかし、これではポストにハガキを入れるのを躊躇してしまうじゃないですか、そこの人。


「あ、あのー……」


呼び掛けると、男は素直に顔を上げた。


と。

その顔を見て、数秒間絶句。それは男も同じだった。


そして、

「山田!?」
「三浦!?」

お互いの名前を叫んだのも、同時だった。