彼に、好きな人がいるらしい

わたしと彼の間で、それから暫くはそのことについてあまり触れなかった。


モテる人の恋愛事情は出回るのが普通だけど、彼は好きな人がいることを公表していないのか、噂は少しも流れなかった。


わたしにだけ、言ってくれたのかな……なんて思ったり。





その後もわたしのどんよりとした心以外は、全ていつも通りだった。


知りたいことは山ほどあるはずなのに、聞く勇気もないし、聞いてからショックを受ける覚悟もない。


そんな中、彼が何気なく話してきた。


雰囲気で、咄嗟に嫌な予感がしたことは、わたししかわからない。


それに加えて、その嫌な予感が数秒後に的中してしまったことも、当然わたししか知らない。







「俺、デートに誘おうと思うんだ。」