ど…どうしよう。
萊には近付いてくるやつにはまず警戒しろとか言われてるけど、警戒しろと言ったってこの人はただの高校生だし、警戒のしようもない。
沈黙が訪れて何となく気まずい雰囲気になる。
仁くん早く来ないかなぁ。
今日に限って朝食を取って来るのが遅い気がする。
早くこの何が起こる訳でもないこの気まずい状況から助けて欲しい…。
「沙鷗 泉(サオウイズミ)って読む。株式会社サオウとか知ってる?」
札を見せながら彼は首を傾げてわたしを覗き込む。
最近はあまり聞かないが、昔何度かテレビのCMで耳にしたことのある会社名。
でも何を作っているかとか何をしてるかとかの知識は皆無だから、まぁ知らないに等しい。
「あんまり知らない…かも」
「えっそうなの?まっいっか。自己紹介にお家紹介なんてこのご時世このお金持ち学園でしかあり得ないよな」
自分に言い聞かせるように呟いた彼は急に笑顔を消して真剣な顔になる。

