寮食堂は朝の時間帯は特に人が集中するため混み合うので、先に席を取っておかないと座るところがなくなってしまう。
わたしのいつもの席は、大きな窓から見える綺麗な中庭の景色を真正面から一望できる特等席。
普通ならすぐ取られてしまうような席だけど、わたしがそこによくいることを寮生は知っているらしく、わたしが食堂開放時間より遅いこの時間に来てもいつもこの席は空いている。
とんだ腫れ物扱いだよ、と最初はへこんだものの今は特に何とも思わない。
右を見ても左を見ても花と木のこんな良い席を取れたんだから。
それで手を打とうじゃない。
そう思っていると珍しくわたしのすぐ隣に知らない人のプレートが置いてあることに気付く。
『沙鷗 泉』
わたしの右隣は仁くんだが、わたしが朝食を取りに行って戻ってくるとその人はもう座っていた。
「席の隣勝手にいただいた」
人懐こそうな笑顔を浮かべる彼はわたしと同じ歳ぐらいだろうか。
落ち着いた長いとも短いとも言えない髪、ボタンを外すことなくしっかりと着こなした制服、顔もどこか真面目な雰囲気が出ている。
わたしは同じような笑顔を作ってで『どうぞ』と言うと黙々と朝食を食べ始める。

