チクリと顔に痛みが走った、のは多分木の枝で顔をくじいたせいだ。
これが危ないから、萊は目を閉じろって言ったのかな。
そんなことを思っているうちにわたしたちを降ろした萊は、高いはずの柵を軽々と超える。
「そういうことかよ」
「ごめん亜紀兄」
萊が亜紀兄を軽そうに担いだからか少し亜紀兄のムッとした顔が柵の間から見えて、これでみんな逃げれると安心したその瞬間。
銃声が鳴り響いた。
弾は見えなかったけれど、誰に命中したかは一目瞭然だった。
「う……っ」
「萊⁉︎」「萊斗‼︎」
「ちっ」
倒れそうになった萊は舌打ちをしながら何とか持ちこたえて、警察官が後ろから追ってくる中、助走をつけて柵を飛び越えた。
「龍の肉体なめんじゃねぇよ‼︎」
萊の叫び声に一瞬怯んだ警察官の動きが少しの間止まった。
萊……。
萊が傷ついてしまった。
何で……こんなことに。

