誰に喋りかける訳でもない言葉がまた疑問を生み、怪訝な顔で萊を見上げているわたしの頭の中にこだまする。
萊はそんなわたしに気付く様子もない。
「正面も多分警察が塞いでる。俺たちは檻の中から出ようとする逃亡者ってことだ」
「萊斗‼︎あっちにさっきの奴が‼︎」
「挟み撃ち……上等」
「逃げる方法が1つあるからそれを実行する。でも危険を伴うから、鷹姉とお嬢は特に覚悟しといて。
あと亜紀兄には少し屈辱的かもしれない」
スピードを上げて走り出した先は、学校の周りを囲んでいる高い柵。
まさか……飛び越えるんじゃ……。
「まず、お嬢と鷹姉。目を閉じてしっかり俺を掴んで」
わたしを片方に、鷹姉をもう片方の肩に乗せて抱えた萊は地面を強く蹴った。
それは本当に一瞬空を飛んだように錯覚してしまうほど、高くて、青い空が近づくように飛び込んできて、すぐに目を閉じたけれど頭がおかしくなりそうだった。

