わたしを狙ってるんじゃ…。
沙鷗だって有名な会社の息子。だけど狙われる確率で言ったら断然わたしの方が高い。
「お嬢‼︎」
走っている最中に後ろからわたしを呼ぶ聞きなれたいつもの声がした。
来て……くれた。
身体の力が抜けて、倒れ込みそうになったわたしを助けるように、真っ直ぐに走ってきてくれた萊はわたしの腕を掴んだ。
「萊…多分わたしが……」
「言わなくていい」
ピシャリと言葉を遮られるとグイッと強い力で手を引かれる。
もう片方の沙鷗に繋がれていた手はすんなりと離され、わたしは萊に背中を預け体重をかける形になる。
「悪いが先に逃げさせてもらう」
「へっ……?」
次の瞬間にはわたしは抱き抱えられていて、お姫様抱っこの状態。
スカート抑えてろぐらいは言ってくれればいいのに…‼︎
とは思ったものの今それどころじゃないことは十分承知。
わたしも呆気にとられたけれど、沙鷗は尚更呆気にとられていて、立ち止まったままわたしたちが行くのを見守っていた。

