儚い瞳の守り人



珍しい。いつもなら何を言っても、結局付いてくるのに。

途中立ち止まって後ろを振り返ると、そこには誰もいない長い廊下が続いていた。


まっ……いっか。

わたしは走って大学寮へと向かった。



「鷹姉ー来たよー」

チャイムを押して隣の部屋に迷惑にならないぐらいの大きな声で叫ぶとすぐに声が返ってきた。

「はーい。今開ける」


寮長さんに外出届けを出して『遅くならないようにね』と窘められながらも鷹姉の部屋に直行したわたし。


カチャっと音が鳴ってドアが開くと、鷹姉の顔はもう仄かに赤くなっていて、亜紀兄もその奥でお酒を飲んでいるのが見える。

「飲むの早いよぉ」

「ごめんごめん。待てなかった」


「蓬、久しぶりだな」

「うん。久しぶり、亜紀兄」


「萊斗は来なかったのか」

「まぁ……ね」



少し残念そうにした亜紀兄は、お酒をグビグビ飲んでいるけれど全然酔っている雰囲気はない。