儚い瞳の守り人



「あ、あぁ何でもないの…。そういえば仁くん3年の教室にいて暇じゃない?」


3年の教室にいても誰かと仲良くする訳でもないし、授業も何を言っているかも分からないだろう。


「いや、そんなことないですよ。良い予習になります」

そんなこと言えるってことは多分仁くんの成績ってもしかしてかなり上位の方なんじゃ…。

わたしとは違い過ぎてなんか悔しい。


「それに蓬先輩を後ろから眺めてるのも何かいいですし」

「それ地味に変態発言…」


ぽろりと溢してしまった言葉に仁くんは思いのほか焦って『俺って変態なのか…?』とボソッと呟いていたから申し訳ないことをしたかもしれない。


成績が良さ気なのが悔しいからフォローはしないけど。



スタスタと階段を上って、すぐにある教室のドアを開けた瞬間、急に制服の裾を引っ張られ何事かと引っ張ったであろう人の方を向くと同じクラスの友達の依ちゃんだった。


依ちゃんは耳元でわたしにしか聞こえないような声で話す。


「沙鷗 泉に言い寄られたって本当?」

「いっ言い寄られたなんて‼︎」


自分で出してしまった声の大きさに驚いて、辺りを見回すけれどどうやら周りは気づいてなさそうで、ほっと一息ついた。