修ちゃんがいなくなってしばらくは、

放心状態だった。

「はぁ~」

腰が抜けたみたいに、

へなへなと床に座り込んだまま動けない。

掴まれた肩に、撫でてくれた頭に、

まだ修ちゃんの手のひらの温もりが感じられて。

そして、唇には、じんじんんとした痛み。



「なんで、キス?」



今更だけど自分自身に問いかける。

私、修ちゃんのこと、好きなの?

みか達にした言い訳を思い出しながら、

自問自答してみる。

付き合いたいなんて思ってないのに,

誰にも渡したくない。

どうにも説明のつかない気持ち。


あーあ、

早川に電話かけなおすどころじゃないや。


抱えこんだ膝の間に思わず顔を埋めそうになるけど、

いつまでもこの部屋に一人でいると、

泣いてしまいそうで。

何とか気力を振り絞って立ち上がると、

預かったスペアキーを握りしめ、

立ち上がる。

何度も家の戸締まりを確認して、

鍵をポストに落とすと、静かに門を閉めた。


「あれ?…望月?」


呼ばれて振り向くと、そこには早川が立っていた。