「んじゃ、帰りますか!」


カーナビがレイナさんの自宅を案内し始めると、

修ちゃんお気に入りの、あれ?何て言ったっけ?

洋楽だから、すぐに名前が出てこない。

とにかく、

カテキョの時間もずっとかかっていた、

聞きなれた曲が流れてきた。


「帰りも同じのかけるなんて、
 
 ホント好きですよねー」


なんて、レイナさんに突っ込む、

修ちゃんのニヤケた横顔。

自分だってずっと聴いてるクセに、よく言うよ。

モロに影響されちゃって、ホント単純なんだから!

私は心の中で、修ちゃんに突っ込みを入れる。

二人のやり取りを聞きながら、

私は無意識に、目を閉じていた。

せめて、視覚だけでも、

情報を遮断しようとしているみたいに。 

今思えば、私にできる、

せいいっぱいの抵抗だったのかも。


「寝ちゃった?」


ふいに耳元に囁く、聞いたこともないような早川の声。

不覚にも、今一瞬、ドキっとした。


「大丈夫」


って言おうとして、口を開くその前に、

私の頭はぐいと引き寄せられ、

コツンと早川の肩にもたれる形になる。


「あー!いいなー、やさしーんだ!」


からかうような、

それでいてなぜかうれしそうなレイナさんの声。

私は何が起こっているのかわからず、

緊張でカラダが硬直する。

早く起きなきゃ。

そう思うのに、

肩に廻った早川の腕が、私を動けなくする。

その力強さが、私に起きるなって言ってる気がした。