「ずるいぞ、お前だけ!
俺なんて、去年も行ってねえし~。
今年なんて、音だけだぞ、音だけ!」

「忙しかったんだ?」

「おう。

もうお客が、次から次へと来てさ、
ずっと下向いて、かき氷作ってた」

「大変だねー」


笑い話みたいに話す修ちゃんに、

合わせるこっちがやりきれなくなる。

私だけ、楽しかったことも、申し訳ないような…。


「寝てるとこ、悪かったな」

「ううん。こっちこそゴメンね、心配かけちゃって…」

「もういいって。
んじゃ、俺、バイトあるから。
おやすみ」

「おやすみ」


通話を終えた携帯を胸に当てると、

後ろめたさが押し寄せてくる。

ホントのこと、言わなくてよかったんだろうか。

コンビニで、レイナさんと元彼に会ったことも、

私がレイナさんに、突っかかるようなマネしちゃったことも、

内緒にしておく方がいいのかな。

もし、私が修ちゃんなら、そんなこと知りたくないと思う。

でも、好きな人のことなら、

何でも知っておきたいような気もする。

こういうとき、経験値ゼロの自分が、

つくづく情けない。

考えても考えても、答えなんて出るわけないし。

そうしている間に、また睡魔に襲われて、

私は考えることを放棄する。

朝が来るまでに、いくつも夢を見た。

それが、どんな夢だったのか、

はっきり覚えていないけれど、

目を覚ますのがもったいないような、

穏やかで心地のいい夢だった。